心の鈴 ~その5~

 

 

 

 

 

隣の窓から見える西の空

 

 

  

隣の窓から見える西の夕方の空

 

空の色が変わる間に、

あきずと隣では、色々な関わりが

繰り広げられています

 

先日、スタッフのPちゃんがお父さんの受診に付き添った際、『家のお父さんが認知症になってませんかね?』と、先生に聞いたとのこと。

先生は、大丈夫!その疑いはないよ…と、仰ったそうですが、Pちゃんは納得がいかないようです。

 

Pちゃんは、私と同い歳で、両親も同じような歳。さらに詳しく話を聞くと、最近、歯医者にかかっているお父さんが薬の管理が出来ない。普段飲む薬の管理に問題はないけれど、何度か言っても歯医者の薬を飲み忘れるとか…。

他にも、コンビニの事を何度訂正しても『菓子屋』と仰り、お孫さんのバッレッタ?か、シュシュ?かを、やはり何度訂正しても『髪留め』と仰るそうで、物忘れが激しいと心配しているのです。

そして、お父さんの物忘れを防ごうと、自宅ではやや厳しい娘になっているようです。私が聞いている限りでも、お父さんは心配する状態ではありません。

 

アイサポートに来るまで、介護の現場に触れたことのなかったPちゃんは、『認知症』という疾患、症状に触れ、敏感になっているようです。

 

直接的な介護職ではないPちゃんですが、介護職である私達よりも認知症の方の思いを理解し、認知症の深い利用者様にも、あったかくて、丁寧な関わりをしています。

それもごくごく自然で、私達を「さすが!うまい!」と唸らせることもしばしばあるぐらいです。

 

デイサービスに来られてスタッフの手伝いをすることを生きがいとされている利用者様が、皿洗いの手伝いの途中、休憩が必要だと判断したPちゃんに促され、椅子に座られました。

ホッと一息つかれたその方は、「ちぎれそぅ~」と、満面の笑みで仰っいました。ご自身の思いを、なかなか言葉では表現できなくなっておられる利用者様なのですが、仕事をやった満足感と、お皿ひとつ拭くのにも試行錯誤の作業の疲労感から、その表情と言葉でご自身の思いを表現されたのだと思います。

その様子を観て、私達スタッフは、「そっかぁ~、疲れたかぁ~、お疲れさま。ありがとう。ありがとう。」と、利用者様以上の笑顔になりました。

利用者様の思いに共感し、心から労をねぎらい、達成感を受け止めたその場の空気は何とも言えず温かく心地の良いものでした。その中心には、Pちゃんもいました。

 

私も以前、利用者様のお話を伺っている様子を見た母に「私には、あんなに優しい言葉をかけてくれたことがない」と言われたことがあります。

特別、母に厳しくあたっているわけでもなく、むしろ我が親だけによけい心配もしているし、大切にもしているつもりなのですが、実際の表現としては、不十分なようです。(←心のどこかでは、確かに関わり方の違いを感じてはいるのですが、素直に認めたくない自分もいます(汗))

 

毎日、介護の必要な方に触れ、私達の役割は?と、考えさせられることも度々あるのですが、ここにその一つの答えがあるようです。

 

家族は思いがあっても(思いがありすぎて)、うまく表現できないことがあります。また、その思いが少し偏った判断を導いてしまうことがあります。

 

でも、私達介護職は、少し冷静になって利用者様を観ることが出来、そのままの利用者様の思いを理解し受け止めることが出来ます。

そこに、私達の強すぎる思いが影響することは少ないようですし、あったとしても仲間が、チームが、セーブをかけ、修正してくれます。

そして、物忘れをされても、スムーズに行動出来なくても、適正な言葉が使えなくても、その事自体をあまり問題とせず、自然にその方の事を受け入れ関わることができ、そのたどたどしさを愛おしくさえ感じられることが多くあります。

 

家族様の、利用者様の、思いが強すぎてギクシャクしてしまう生活。

その生活の潤滑剤となることが、私達の役割の一つだと思います。

息詰まる前に私達を頼りにして頂き、日々の生活の中でギシギシと鳴っているその音が少しでも小さくなった時、私達の役割は果たせたことになるのでしょうか?

 

 こんなことを考えながら、今日も明日も、利用者様と、家族様と、仲間と大いに笑い、大いに泣き、共に何かを感じていたいと思っています。

 

                                      gen